このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-12
 

だったら、出てやろうか・・・君の今夜見る夢の中に。

男から女への問い
そんなの迷信だと思うけど
袖を折り返して寝ると
夢の中で思う人に逢えるんだって。
今、君への思いはつのるばかり
だから、袖を折り返して寝たよ・・・
――僕の姿を夢で見たかい?

我妹子(わぎもこ)に
恋(こ)ひてすべなみ
白(しろ)たへの
袖返(そでかへ)ししは
夢(いめ)に見えきや
(作者未詳 巻十一の二八一二)

女から男への答え
アナタが
袖を折って寝た夜の夢だったんだー。やっぱし。
見た!見た!逢えたよ!逢えた!
ほんとのアナタと
デートしたみたいに――。

我が背子が
袖返(そでかへ)す夜の
夢(いめ)ならし
まことも君に
逢(あ)ひたるごとし
(作者未詳 巻十一の二八一三)

>>解説
肉体から離れた霊魂は、時間と空間を超越する。だから、逢えない二人も、夢の中なら、デートができるというわけだ。誰にも邪魔されずに。そのためにしたのが、「袖返し」のまじないである。袖を折って寝ると、相手の夢の世界に侵入できると信じられていたのであろう。それを男は確認したかったのである。女は答える。「まことも君に 逢(あ)ひたるごとし」と。メデタシ、メデタシ。


 
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