年上の彼女から、「わたしがおばあちゃんになっても愛してくれる?」といわれたら・・・
そんなこと疑ってんのかよ――
おまえさんが百歳になって
歳とって歯がなくって・・・ベロ出すようになって
腰が曲がたってさ
――俺、お前の家に来ることはいとわないよ、好きだーってぇ、
気持ちが増すことはあってもさ
百歳(ももとせ)に
老い舌出(したい)でて
よよむとも
我(あれ)はいとはじ
恋(こひ)は増すとも
(大伴家持 巻四の七六四)
>>解説
大伴家持が、紀女郎の歌に答えた歌である。家持の恋人の一人であった紀女郎は、なんと彼より十五歳も年上。当時の年齢から考えると、姉というより母に近い年齢であろう。彼女は、疎遠になってゆく家持に、たびたび自分への思いを問いただす歌を贈っている。気持ちを疑われた家持が答えた歌の一つがこれである。「そんなこと疑ってんのかよ――」は、家持の気持ちを斟酌して、補ったもの。
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