このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-22
 

顔に出さなくても、口に出さなくても、気持ちは変わらないのにね。

夏の野原の繁み
その繁みに咲いた姫百合・・・
そんな人に知られない恋は
――苦しいもの

夏の野の
繁(しげ)みに咲ける
姫百合(ひめゆり)の
知(し)らえぬ恋(こひ)は
苦(くる)しきものぞ
(大伴坂上郎女 巻八の一五〇〇)

>>解説
巻八の「夏の相聞」の冒頭に置かれている大伴坂上郎女の歌。同じ姫百合でも、夏の野の繁みに咲く姫百合は目立たない。人に知られることもなく、ひっそりと咲く恋の花もある。
その苦しさを訴えているのである。姫百合の清楚な姿が、読む者に乙女心を髣髴とさせる歌である。


 
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