このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-34
 

やっぱり、浮名は流したくないよねぇ。

彼女の名前も――
俺の名前も――
浮名を流せば・・・残念無念
だから、富士の高嶺じゃないけれど
心で燃えても、表にゃ出さずに
生きてゆくのが関の山

妹(いも)が名も
我(わ)が名も立たば
惜(を)しみこそ
富士(ふじ)の高嶺(たかね)の
燃えつつ渡れ
(作者未詳 巻十一の二六九七)

>>解説
富士の山は、当時燃える山であった。燃えながらも、太古の昔からある山、それがこの歌の富士山のイメージである。だから、「心で燃えるだけ」という喩えに使われたのである。
わけありの二人は、その仲を公表することなく生きてゆこうというのである。富士山を持ってくるあたりの誇張は、民謡やお座敷歌のもつ滑稽さがあり、訳文はそういった感じに仕立ててみた。


 
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