生まれ出ずる苦しみ、恋する苦しみ、昔も今も
われより後に
生を受くる者たちよ
我が苦しみのごとく
恋する道に
迷うこと勿(なか)れ
かく祈るや切・・・
我(あ)が後(のち)に
生(う)まれむ人は
我(あ)がごとく
恋する道に
あひこすなゆめ
(作者未詳 巻十一の二三七五)
>>解説
背筋をピーンと伸ばした歌。こんな苦しみを、私より後に生まれる人には経験して欲しくない、と訴えている。しかし、以後千三百年、人の人たるものが、恋に悩まぬ日はなかった。
いわんとする心は、自らの苦しみの深さにあるのであろう。訳文は、そのあたりを勘案して、上品に訳してはみたが・・・。 |