えっ、バレちゃった。
道の辺(へ)の
いちしの花の
いちしろく
人皆知りぬ
我(あ) が恋妻(こひづま)は
(作者未詳 巻十一の二四八〇)
ええっ、困った!
道端に咲いている・・・イチシの花ではないけれど
・・・イチジるしくはっきりと知られてしまったよ
俺の恋妻のことは――
>>解説
わけありで、公にできない「恋妻」が男にはいたのであろう。ところが、思わぬところで、それは明々白々となったのである。「イチシの花」については未詳だが、衆目を集める目だった花だったことは間違いない。それが、道端に咲けば、注目されることになる。ただし、歌の調子は楽しげで、困惑しながらも、照れ笑いを浮かべている姿が私には目に浮かぶ。 |