このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-44
 

待ってやろうじゃないのいつまでも・・・とすごまれたら、

男はどうする
いくら独りで寝たって
薦(こも)の敷物なんて傷まないさ!
だったら、待ってやろうじゃないかアンタのこと・・・
この綾織りの敷物が擦り切れちゃって
紐になるまでさ
待ってやろうじゃないかアンタのこと

独(ひと)り寝(ぬ)と
薦朽(こもく)ちめやも
綾席(あやむしろ)
緒(を)になるまでに
君(きみ)をし待(ま)たむ
(作者未詳 巻十一の二五三八)

>>解説
「いくら独りで寝たって、床の敷物なんか痛まないさ、二人じゃないんだもの・・・」と女は男に歌いかける。二人で寝れば、傷むというのは、言外にかすかなエロスがあることはいうまでもない。「綾席(むしろ)」は女が共寝のために用意した敷物なのだが、それが独寝で紐になるというのだから尋常な話ではない。女は、男にすごんでいるのである。「待ってやろうじゃないかアンタのこと」は、そのすごみを斟酌した訳である。


 
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