このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-46
 

ほんとうに怖いのは、お父さんじゃなくて、お母さん?

おかあちゃんに話したらさぁ
いったい、どうなると思う?
へたしたら、あんちゃんも、あたいも・・・
もう逢えないかもしれないよ
何年も何年も――

たらちねの 母(はは)に申さば
君も我(あれ)も
逢(あ)ふとはなしに
年(とし)ぞ経(へ)ぬべき
(作者未詳 巻十一の二五五七)

>>解説
二人の仲を、母に打ち明けることの怖さを男に訴えた歌である。それほど、万葉の母は、娘に対して厳しかった。収穫前の田を荒らしに来る猪や鹿を番小屋から見張るように、母親は娘を監視したのである(巻十二の三〇〇〇)。無断で娘に手を出そうものなら、痛い目に遇わせることもできたのであろう。つまり、母親には、家や娘に関する広範な権限が与えられていたのである。


 
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