恋をすると心の中にもうひとりの自分がいることに気付くよね。
自分の心を焼き尽くす嫉妬の炎も、自分の心から
大好きだーったアナタを恋しく思う愛の炎も、自分の心から
――二つとも同じ心から出た炎なんだよね、不思議?!
我(あ)が心
焼くも我(われ)なり
はしきやし
君に恋(こ)ふるも
我(わ)が心(こころ)から
(作者未詳 巻十三の三二七一)
>>解説
巻十三の相聞歌のうちの一首。この歌は、長歌についた反歌である。長歌は、夫の浮気相手の女を激しくなじりとばす異色の作品となっている。激しい嫉妬の炎に燃える自分と、にもかかわらず彼氏のことをいとおしく思う自分、それが同じ心から出でいるとは?・・・と作者は戸惑っているのである。怒る自分、愛する自分、それを客観的に分析する自分、すなわち三人の自分が、心の中に住んでいるのである。 |