自分を迷わした恋という奴にパンチ!
好きだった人のね
顔だけでも忘れられるだろうと
手を握りしめてぶっ叩いても・・・懲りないんだよねアイツ
恋というヤツは!
面忘(おもわす)れ
だにもえすやと
手握(たにぎ)りて
打(う)てども 懲(こ)りず
恋(こひ)といふ奴(やつこ)
(作者未詳 巻十一の二五七四)
>>解説
この歌の恋は、憎しみの対象である。顔だけでも忘れたいと思っても、どうすることもできない自分は、恋のヤツめにパンチを喰らわしたというのである。さて、結果はどうであったか。手を握って、パンチを喰わしても、懲りずにまとわりつくもの・・・それが恋だというのである。「奴」は「奴婢」のことで、ここでは恋を貶(おとし)めていう言葉。それほど憎い、憎いけれども付きまとう、それがこの歌の恋である。 |