このページは、「小さな恋の万葉集」に発表した訳文をかかげたページです

恋歌-65
 

自分を迷わした恋という奴にパンチ!

好きだった人のね
顔だけでも忘れられるだろうと
手を握りしめてぶっ叩いても・・・懲りないんだよねアイツ
恋というヤツは!

面忘(おもわす)れ 
だにもえすやと
手握(たにぎ)りて
打(う)てども 懲(こ)りず
恋(こひ)といふ奴(やつこ)
(作者未詳 巻十一の二五七四)

>>解説
この歌の恋は、憎しみの対象である。顔だけでも忘れたいと思っても、どうすることもできない自分は、恋のヤツめにパンチを喰らわしたというのである。さて、結果はどうであったか。手を握って、パンチを喰わしても、懲りずにまとわりつくもの・・・それが恋だというのである。「奴」は「奴婢」のことで、ここでは恋を貶(おとし)めていう言葉。それほど憎い、憎いけれども付きまとう、それがこの歌の恋である。


 
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